皆様、今までご覧いただきありがとうございました。最後の記事は「コンセプトルーム」についてです。
コンセプトルームは、ある程度の条件を与えられ、設計者が自由に使用方法を考え提案する形の部屋です。平成29、30年度の試験で出題されました。令和元年度の試験ではコンセプトルームの出題はありませんでしたが「室の設え」を問われた問題が出ましたので類題が出題されたと言えます。
コンセプトルームの内容を試験本番で考え始めていては時間が足りなくなります。あらかじめ自分の案を準備しておきましょう。
今回提案するコンセプトルームは、日照条件が悪くても成立するものを考えてみました。この場合のメリットとしては、コンセプトルームを北側に配置することができ、日照条件を求められる諸室を南側に優先的に配置することができることです。
今回示すのは、あくまで当研究所の提案例です。これらを参考に自分の案を作ってみてください。
地域住民と施設利用者、居住者との交流を図ることを目的とした居室を計画する
居室の「使用方法」と「設い(しつらい)」について提案せよ(記述とイメージ図で説明する)
※「設い」とは、過去の課題文における説明において、「H30:インテリア、什器、設備機器等 H29:内装、什器、設備機器等」とされています。なお、令和元年では注釈なく使用されていますので、当たり前の用語として取り扱われています。しっかり意味をつかんでおきましょう。
コンセプトルームを計画するにあたって、今回のテーマは下記のとおりです。
①世代を超えて愛される映画を上映するシアタールーム
②老若男女が集う陶芸、絵画教室
③皆で楽しむ茶道教室
④おふくろの味を伝える料理教室
地域住民と交流を図るため、世代を超えて愛される映画を上映するシアタールームを計画する。
映画を上映できるように、短辺側壁の上部にスクリーンを収納し、対面天井にはプロジェクターを設置する。上映時には部屋を暗くする必要があるため、窓には遮光カーテンを用意する。移動可能な椅子を用意し、様々なレイアウトが可能なようにし、人数の変動に対応できるようにする。また、シアタールームとして利用していない場合には、椅子とテーブルを並べた談話室として使用できるようにする。
それでは、このコンセプトを記述にしてみましょう。
記述例(シアタールーム)
【使用目的】世代を超え愛される映画を上映し、地域住民と施設利用者の交流が図られるシアタールームを計画する。上映会を開催していない時には、施設利用者の談話室として利用できるようにする。
【設え】上映時の暗さを確保するために窓に遮光カーテンを用意した。壁上部にスクリーン収納、天井にプロジェクターを天吊り設置した。移動可能な椅子を用意し、様々な人数に対応できるようにした。
地域住民とともに世代を超えた趣味の集まりとして、文化交流を目的とした「陶芸教室」「絵画教室」を計画する。数個の流し台を用意し、用具や手を洗えるようにする。部屋の開口部を北側に設けることで、直射日光、朝日、西日が入らない安定した光が得られるようにした。照明は演色性の良い昼光色の蛍光灯を採用した。
収納庫を用意し、折り畳みの机、椅子を用意した。椅子、机は高さの違うものを用意し、陶芸、絵画のどちらにも対応でき、人数の変化も可能なものとした。
それでは、このコンセプトを記述してみましょう。
記述例 (陶芸、絵画教室)
【使用目的】地域住民と施設利用者が文化交流を目的として、陶芸教室、絵画教室を計画した。
【設え】道具や手を洗えるように、数個の流し台を用意した。照明器具は、作品の色がわかりやすくするように演色性の良い昼光色の蛍光灯を採用した。収納庫を用意し、高さの異なる机、いすを準備することで陶芸、絵画のどちらにも対応可能なものとした。
地域住民と施設利用者の交流を目的とした、気軽なお茶会を楽しめる茶道教室を計画した。畳の小上がりを用意し、窓には障子を入れ柔らかい落ち着いた光が入る部屋とした。教室を開催していない時には、和室の談話室として利用できるように計画した。
それでは、このコンセプトを記述してみましょう。
記述例 (茶道教室)
【使用目的】地域住民と施設利用者の交流を目的とした、気軽なお茶会を楽しめる茶道教室を計画した。教室を開催していない時には、和室の談話室として利用できるように計画した。
【設え】茶道教室として、落ち着いた雰囲気とするために畳の小上がりを用意した。また、窓には障子を入れ柔らかく落ち着いた光を取り入れることとした。
地域住民と施設利用者が交流する目的の料理教室を計画した。施設利用者で料理の得意な人が先生となり、「おふくろの味」を若い世代の地域住民に伝える場を提供することとした。
生徒用として、作業机、流し台を4台用意し、一度に8人程度が参加できるものとした。先生の手元作業を確認できるように各机の上部にはモニターを設置した。床材は掃除のしやすさから、クッションフロア材とした。生徒の安全性を考慮して、調理器はIHコンロを採用した。
それでは、このコンセプトを記述してみましょう。
記述例 (料理教室)
【使用目的】地域住民と施設利用者が交流する目的の料理教室を計画した。施設利用者で料理の得意な人が先生となり、「おふくろの味」を若い世代の地域住民に伝える場を提供することとした。
【設え】生徒用として、作業机、流し台を4台用意し、一度に8人程度が参加できるものとした。先生の手元作業を確認できるように各机の上部にはモニターを設置した。調理器は安全性からIHコンロを採用した。
最後まで読んでいただきありがとうございます。皆様の努力が報われること、祈っています。
一級建築士記述研究所 源、ミド、モチ
コメント
コメント一覧 (2件)
おはようございます。勉強仲間からこのブログを教えてもらい春先から読ませてもらっていました。内容もさることながら、表紙の写真も毎回の楽しみでした。どうもありがとうございました。
最後の写真は皆様に良い桜便りが届くよう、満開の姫路城としました。
残り少しです。体調整えて、がんばってください。