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添削室からのお便り①

2022年9月17日

当研究所では添削室を開設し、一級建築士製図試験の記述問題で受験生の皆さんがどのような部分で間違いやすいのか?また、どこが苦手なのか?の研究を始めました。

研究の成果がチラッと見えてきた時点で、毎回、お便りを書くことにしました。

私たちは、常に「解答を書き終わった後に客観性を持って自分の解答を見直すクセを付けてください」とお伝えしています。客観性を持って解答を確認していくということが、具体的にどのよなものかを少しずつお伝えしていきます。

まず、下記の解答を確認し、自分が解答を添削するつもりで読んでください。

設問:このプランで公園の景観利用について配慮したことを記述しなさい

モニターさん作成解答

公園の景観に配慮し、食堂とデイルームを南面に配置した。屋上庭園を一階の屋上南側に配置し、景観と連続性を持たせることで、利用者にとって快適な空間となるように配慮した。また、多くの人が利用する多目的室を南面に配置することで広がりを持つ空間となるように配慮した。

いかがですか?一通り読んで、どのような点に気づきましたか?

それでは、まず良い点から確認していきます。

色々な視点から検討しているところが良いところです。製図試験の記述に関する採点方法は不明です。加点法なのか?減点法なのか?わかりません。完璧な答えを簡潔に書いてしまえればいいのですが、なかなか思うようにはいきません。

仮に、解答欄が4行用意されていたら、少なくとも4行目にかかるくらいまでは書きましょう。全く的外れな解答でない限りは「数打ちゃ当たる」気持ちで何も書かないよりはマシです。

それでは、次に改善点を確認していきます。

今回取り扱う設問は、当ブログでは「計画分野」に分類している問題です。この分野は、自分が計画したプランについて問われ、図面では表現できない設計者の考えを伝えていきます。

他の分野のように暗記することで何とかなる部分が少ないので、苦手とする方が多いと思われます。

まず、最初の文です。

設問:このプランで公園の景観利用について配慮したことを記述しなさい

モニターさん作成解答

公園の景観に配慮し、食堂とデイルームを南面に配置した。屋上庭園を一階の屋上南側に配置し、景観と連続性を持たせることで、利用者にとって快適な空間となるように配慮した。また、多くの人が利用する多目的室を南面に配置することで広がりを持つ空間となるように配慮した。

設問では「配慮したこと」を聞かれています。「公園の景観に配慮し、食堂とデイルームを南面に配置した」という会話をしていた場合、聞き手の次のひとことは「何で?」です。

なぜ南面に配置したかが説明されていません。たとえ南面に配置されていたとしても、南側に小窓があるだけでは景観に配慮しているとは言えません。

この場合は、各部屋で公園の景観を積極的に取り入れたことをアピールする必要があります。「各部屋の公園側に大きく開口を設けることで、利用者が景色を楽しめるようにした。」などの理由が必要です。

つぎに2番目の文です。

設問:このプランで公園の景観利用について配慮したことを記述しなさい

画像に alt 属性が指定されていません。ファイル名: -e1597034813401-1024x533.jpg
モニターさん作成解答

公園の景観に配慮し、食堂とデイルームを南面に配置した。屋上庭園を一階の屋上南側に配置し、景観と連続性を持たせることで、利用者にとって快適な空間となるように配慮した。また、多くの人が利用する多目的室を南面に配置することで広がりを持つ空間となるように配慮した。

屋上庭園において、「公園の景観と連続性」を持たせることが、「利用者の快適性」には直ぐにつながりません。利用者がなぜ快適になるのかを説明することで、設計意図が伝わりやすくなります。

「屋上庭園を南側に配置し、公園を見渡せるようにしたことで、利用者にとって快適な空間となるように配慮した。」と理由を追加します。

なお、「一階の屋上」に配置したことは設計条件での指定があったと設定しています。設計条件で「一階屋上に庭園を設ける」とある場合は、解答文に書く必要性がないため省略します。

計画の要点等は「図面で補足できない部分を説明」するので、設計条件で与えられている部分をあえて書く必要はありません。

最後に3番目の文です。

設問:このプランで公園の景観利用について配慮したことを記述しなさい

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モニターさん作成解答

公園の景観に配慮し、食堂とデイルームを南面に配置した。屋上庭園を一階の屋上南側に配置し、景観と連続性を持たせることで、利用者にとって快適な空間となるように配慮した。また、多くの人が利用する多目的室を南面に配置することで広がりを持つ空間となるように配慮した。

多目的室が広がりを持つ空間となるためには、公園の景観が関わっているはずです。しかし、その関係性についての説明がないので、理由を追加して文を修正します。

「広がりを持つ空間」であり、公園の景観を利用していることから、ホールと公園が一体的な空間となるように工夫していることをアピールしてみましょう。

「多目的室は天井の高い開口部から公園の景色を積極的に取り入れることで、公園と一体的な広がりを持つ空間とした。」

以上を踏まえて、解答例を修正したものがこちらです。理由が不足していた部分を補っていること確認してください。

設問:このプランで公園の景観利用について配慮したことを記述しなさい

画像に alt 属性が指定されていません。ファイル名: -e1597034813401-1024x533.jpg
当研究所作成解答

食堂とデイルームを建物南面に配置し、各部屋の公園側に大きく開口を設けることで利用者が景色を楽しめるようにした。屋上庭園を南側に配置し、公園を見渡せるようにしたことで、利用者にとって快適な空間となるように配慮した。多目的室は天井の高い大開口から公園の景色を積極的に取り入れることで、公園と一体的な広がりを持つ空間とした。

  :改善ポイント

モニターさん作成解答

公園の景観に配慮し、食堂とデイルームを南面に配置した。屋上庭園を一階の屋上南側に配置し、景観と連続性を持たせることで、利用者にとって快適な空間となるように配慮した。また、多くの人が利用する多目的室を南面に配置することで広がりを持つ空間となるように配慮した。

以上を参考に自分の解答を読み直すことで、次第に設問にしかっり答えることができるようになります。

まとめ

自分の文章をチェックする時は、計画したこと理由は必ずセットで答えているかを確認しましょう

本日のお便りはここまでです。では、つぎのお手紙までさようなら。