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空調設備の基礎のキソ

2022年9月17日

一級建築士製図試験では設備に関する知識も問われ、多く出題されているのは「空調設備」です。今日は近年の空調の主流となっている「空冷ヒートポンプパッケージ方式」について説明します。

空調設備とは

空調設備とは、空気調和設備や換気設備を合わせたものの総称です。空気調和とは、「温度」「湿度」「気流分布」「清浄度」を整えて、室内の環境を快適にすることです。

温度熱源を用いて空気を「加温」「冷却」します
湿度加湿器、除湿器を用いて空気の湿度を調整します
気流分布送風機で空気の流れを作ります
清浄度フィルタを用いて空気に含まれる汚染物質を除去します
空気調和の4要素

空冷ヒートポンプパッケージ方式とは

製図試験で個別空調が必要となる場合に、最も多く選ばれる方式は「空冷ヒートポンプパッケージ方式」です。この方式は家庭用「ルームエアコン」の規模が大きくなったもので、業務用の「ルームエアコン」を指します。

まずは、身近な家庭用ルームエアコンから説明します。家庭用ルームエアコンの仕組みは、ほぼ「空冷ヒートポンプパッケージ方式」と同じです。基本的な構成を見てみましょう。

家庭用ルームエアコンの仕組み
室内外構成部品内容
室内機フィルター室内のほこりを取り除きます
熱交換器室内の空気を温めたり、冷やします
クロスフローファンファンを回して風を起こし、空気を吹き出します
室外機熱交換器冷媒を温めたり、冷やします
ファン・モーター冷媒の熱を放出します
インバーターモーターの回転数を変えます
家庭用エアコンの機器構成

冷房運転の場合は、室外機の熱交換器で冷媒が冷やされます。冷媒配管で冷媒が室内機へ運ばれ、室内の熱交換器で室内空気を冷やします。室内の熱交換器は熱伝導率の高いアルミ製フィンで構成され、室内空気との接触面積を大きく取った熱交換器の中を通過することで熱が奪われ冷たい空気へと変わります。

空気の流れとしては、クロスフローファンによって室内の空気が循環するだけなので、別途、換気設備が必要となります。空冷ヒートポンプパッケージ方式も基本的な機器構成は同じなので、同様に換気機能は付属していません。換気は別途、全熱交換器を用いて行います。よって、空調設備としては空冷ヒートポンプパッケージ方式を採用した場合、全熱交換器とセットで空調ができていることとなります。

空冷ヒートポンプパッケージ方式では、室外機と室内機の熱移動は全て冷媒によって行われます。このため、必要となるのは冷媒配管、ドレン配管、電源・計装ケーブルのルートなので、パイプシャフトだけが必要となります。

空冷ヒートポンプパッケージ方式の種類は

製図試験で採用する「空冷ヒートポンプパッケージ方式」は、居室にて個別空調が必要な場合の「天井カセット・ビルマルチ型」と、大空間で高い吹出能力が必要な場合の「ダクト接続型(床置き型)」の二種類です。

空冷ヒートポンプパッケージ方式天井カセット・ビルマルチ型

ビルマルチ型は1台の室外機に10台程度までの室内機を接続する方式です。室内機は天井内に組み込まれる「天井カセット」が一般的です。ヒートポンプを用いて、冷媒に熱を与えたり取り除きます。ヒートポンプは外気が持っているもともとの熱エネルギーを利用するので、省エネルギー性に優れています。

別途、換気設備が必要とされ、多くの場合、全熱交換器を採用します。

空冷ヒートポンプパッケージ方式ダクト接続型(床置き型)

ダクト接続型は大空間の天井が高い場合、居住域まで空調したいときに採用します。空調対象の居室近くに機械室を設けます。高い天井から給気する場合にはダクトを設けて空調した空気を届けます。なお、ダクト接続型の場合も換気機能がないため、別途、換気設備が必要となります。この際の換気には、全熱交換器または外気処理空調機を採用することが多いです。

空調設備については、製図試験で必ず必要となる知識です。早いうちに確認しておきましょう。

◆番外編

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