【一級建築士製図試験】計画の要点等 過去問分析(平成30年)

計画の要点等がA3解答用紙で問われるようになって10年が経過しました。近年の試験では、8割程度は過去と類似した問題が出題されます。
よって、過去問対策が重要ですので、これまでにどんな問題が出たのか見ていきます。
本日は平成30年「健康づくりのためのスポーツ施設」です。
なお、この年から問題用紙がA2となり、敷地条件や地盤条件が詳細に記載されました。
概要
廃校となった小学校の屋外プール跡地に、温水プールのあるスポーツ施設を計画するものです。
旧小学校の校舎はカルチャーセンターに、体育館は全天候型スポーツ施設に、校舎は人工芝グラウンドに改修されています。
これら施設と一体的に使用できる建築物を設計します。
敷地条件
- 北側:駐車・駐輪場(一体利用の隣地)
- 南側:歩行者専用道路 公園
- 西側:桜並木(一体利用の隣地)
- 東側:歩道付き道路 住宅地
主な要求室等
健康増進部門
- 温水プール
- 更衣室(プール用)
- 多目的スポーツ室
- トレーニングルーム
- ダンススタジオ
- キッズ用プレイルーム
- 更衣室(プール以外)
- コンセプトルーム
管理・共用部門
- エントランスホール(3層吹抜け)
- カフェ
- 事務室
設備スペース
- 機械室(ろ過設備等)
- 多目的スポーツ室用空調機械室
- 電気設備スペース(屋上)
外部施設
- 屋外テラス
特徴的な留意事項
- 隣地の施設と一体的に使用できるように計画する
- 運動により生じる振動、騒音に配慮
- 設備機器の搬出入、更新に配慮
- 延焼のおそれのある部分には所定の防火設備を計画
- 防火区画が必要な部分には所定の防火設備を計画
- 地上または避難階に通ずる2以上の直通階段を計画
- 必要に応じて敷地内の避難上必要な通路を計画
出題内容
平成30年は、計画の要点等として9問出題されました。
設問 | 内容 | 分野 |
(1) | 温水プール室の自然採光、空調エネルギー抑制 | 環境 |
(2) | EHと3層吹抜け等における自然採光 | 環境 |
(3) | 靴の履き替えを考慮したゾーニング、動線 | 計画 |
(4) | 隣地施設との一体的使用についての工夫 | 計画 |
(5) | 温水プール室の構造計画 | 構造 |
(6) | 多目的スポーツ室の騒音、振動対策 | 構造 |
(7) | 地盤条件と経済性を踏まえた基礎計画 | 構造 |
(8) | コンセプトルームの使用方法、設え | 計画 |
(9) | 防火区画の形成方法 | 計画 |
EH:エントランスホール
(1)温水プール室の自然採光、空調エネルギー抑制
温水プール室における自然採光の確保と空調エネルギーの抑制について、ガラス面及び開口部の位置、平面計画、断面計画等の工夫が問われました。
工夫したことを2つ記述するよう求められ、補足図記入欄(任意)もありました。
温水プール室の特記事項には、「自然採光を十分に確保」とありますので、南面に配置したり、トップライトを設けるのが望ましいでしょう。
自然採光については、自分のプランに合わせて、開口部やトップライトから確保することを記述します。
空調エネルギー抑制については、ルーバー、庇等を設置することによる日射負荷低減や、開口部やトップライトでの通風による空調負荷低減を記述します。
補足図については、平面図により開口部の位置を示し、採光や通風を図示するか、断面図により日射遮蔽の様子を図示することが考えられます。
(2)EHと3層吹抜け等における自然採光
エントランスホール、3層吹抜け、吹抜け周囲の空間における自然採光と空調エネルギー抑制に関し、ガラス面と開口部の位置、平面計画、断面計画についての工夫を記述するものです。任意の補足図記入欄がありました。
3層吹抜けをどのように計画するかによりますが、吹抜けが外壁面であれば開口部やトップライトから採光を取ります。また、外壁に面しない建物中央に吹抜けを計画した場合は、トップライトから採光を確保します。
空調エネルギー抑制については、開口部に日射遮蔽対策をすることで、外部からの熱流入量を減少させます。また、通風経路の確保することで、中間期の空調稼働時間を減らします。
補足部については、断面図や平面図により採光、通風を図示すればよいでしょう。
(3)靴の履き替えを考慮したゾーニング、動線
利用者の靴の履き替え等を考慮した、各部門のゾーニングと動線計画について、補足図(任意)付きで問われました。
なお、履き替えを考慮した動線計画に関する問題は、平成28年(子供・子育て支援センター)でも出題されています。
問題文には、どの室が上足利用かは書いてありませんでしたので、利用形態を自分で想定して記述しなければいけません。
温水プール室と更衣室A(プール用)は素足で利用しますので、他の動線と交錯しないことを記述します。
その他の健康増進部門の室は、更衣室Bで着替え、上足で利用することが想定できますので、靴の履き替えや着替えがスムーズにできる動線としたことを記述します。
補足図については、簡易な断面図やブロック図で図示できればよいでしょう。
(4)隣地施設との一体的使用についての工夫
旧小学校の校舎等を改修して建設した、カルチャーセンターやグラウンドとの一体的使用について、補足図(任意)付きで問われました。
設計条件で、エントランスをどの方向に設けてもよいとされ、隣接するカルチャーセンター等との一体使用を意識して計画する必要がありました。
自分のプランに合わせて、想定した利用方法について記述します。
例えば、メインエントランスを北側や西側に設けたなら、「隣地の施設から認識しやすい位置にメインエントランスを設け、利用しやすいようにした」のように記述します。
補足図については、簡易は平面図で図示すればよいと考えられます。
(5)温水プール室の構造計画
温水プール室の構造計画について、「構造種別、架構形式、スパン割り」「上部の床又は屋根の構造、材料」「上部の床又は屋根の部材寸法」が問われました。
構造種別、架構形式、スパン割り
解答欄は3行で記入するように用意されていましたので、それぞれ簡潔に記述します。
構造種別はRC造、架構形式はラーメン架構で計画しますので、定型文で対応します。スパン割りについては、温水プール室をどのようなスパン割りで計画したかを記述します。
上部の床又は屋根の構造、材料
温水プール室は、10m×18mのプールが入る広さですので、無柱空間で計画する必要があります。よって、大スパンとなる大梁にPC梁を採用することを記述します。
解答欄は1行でしたので、「大スパンの大梁をプレストレストコンクリート梁とした」と記述します。
上部の床又は屋根の部材寸法
「大スパンの大梁」「大スパンの大梁に直交する小梁」「大スパンの大梁を支持する柱」の部材寸法を記入するものです。
大スパンの大梁はPC梁のことですので、500mm×1200mm程度、これに直交する小梁は通常の小梁と同様300mm×600mm程度で計画します。
大スパンの大梁を支持する柱は、通常(700mm×700mm程度)よりサイズアップして800mm×800mm程度とします。
(6)多目的スポーツ室の騒音、振動対策
多目的スポーツ室から発生する振動、騒音に対する、上下階や隣接する室への影響を防ぐため考慮したことを問われました。
下階への対策としては、二重床を採用することが考えられます。
上階や隣接する室に対しては、天井や壁の仕上げ材料を吸音性の高いものとする等の方法があります。
(7)地盤条件と経済性を踏まえた基礎計画
平成28年、平成29年に続き、基礎計画について問われました。地盤条件や経済性を踏まえ、採用した基礎、支持層の考え方、基礎底面レベルについて記述するものです。
この年は地盤断面図が記載され、建築予定地の屋外プール跡地について、以下の条件が示されていました。
- 屋外プール躯体撤去部分32m×20mをN値=5程度の砂で埋戻し(GL-1.8m)
- その他はGL-1.5m以深はN値=30程度の砂礫層
- 地下水位はGL-2.2m
若干複雑な条件であるため戸惑うかもしれませんが、埋戻し部分はすべて取り除かれますので基礎計画に関係ありません。
支持層はGL-1.5m以深の砂礫層と考え、ベタ基礎で計画できます。基礎底面は地下水位GL-2.2mより上とし、GL-2.0mとすれば問題ありません。
(8)コンセプトルームの使用方法、設え
平成29年に続き出題されました。設計条件にあった使い方ができる室を、自由に計画します。
使用方法としては、世代間交流、スポーツに関する展示、食育関連、託児等が考えられます。
「設え」には、「内装や什器」という説明がありましたので、想定した使用方法に合わせて記述します。
例えば「食育」であれば、調理台やテーブルを設置することを記述します。
(9)防火区画の形成方法
防火区画の形成方法について、具体的に記述することを求められました。
留意事項には、面積区画と竪穴区画を、所定の防火設備で適切に区画するとありました。
面積区画は特定防火設備で、竪穴区画は防火設備以上で区画する必要があります。このことを踏まえ、どのように区画を形成したかを記述します。
まとめ
以上、平成30年の計画の要点等についてまとめました。
この年は、設備分野の出題がなかったほか、計画、環境で4問で補足図記入欄があり、これまでに比べ自分のプランを説明する能力が問われました。
近年は、計画分野の出題が増える傾向ですので、計画の要点等では、いかに自分のプランを相手に伝えらえれるかが重視されるのではないでしょうか。
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