【一級建築士製図試験】計画の要点等 過去問分析(平成28年)

計画の要点等がA3解答用紙で問われるようになって10年が経過しました。近年の試験では、8割程度は過去と類似した問題が出題されます。
よって、過去問対策が重要ですので、これまでにどんな問題が出たのか見ていきます。
本日は平成28年「子ども・子育て支援センター」です。
概要
小学校、公園に隣接して、保育所と児童館のある「子ども・子育て支援センター」を計画するものです。
また、子育てについての相談や情報提供をする「子育て支援施設」を併設します。
計画にあたっては、パッシブデザインを積極的に取り入れることが求められました。
敷地条件
- 北側:歩道付き道路 集合住宅
- 南側:公園
- 西側:小学校
- 東側:歩道付き道路 商業施設
主な要求室等
保育所部門
エントランスホールから保育所玄関を経由してアクセス。上履き利用。
- 乳児室
- ほふく室
- 保育室×4
- 遊戯室
- 調理室、保育士室、医務室等
- 保育所玄関
- 事務室①
児童館・子育て支援部門
エントランスホールから受付を経由してアクセス。上履き利用。
- 集会室
- プレイルーム(辺長比1.5以下の無柱空間)
- 図書室
- 工作室
- 児童クラブ室
- 育児交流室
- 受付
- 事務室②
共用・管援理
- エントランスホール
- 設備スペース
外部施設
- 屋外遊戯場(地上、保育所の乳幼児が利用)
- 屋上広場(1階の屋上、子育て支援部門の利用者が利用)
- 車いす使用者用駐車場 1台
- 施設利用者用駐車場 1台
- サービス用駐車場 1台
- 駐輪場 10台
特徴的な留意事項
- 太陽熱、地中熱、井水、植栽等を利用し、環境負荷低減
出題内容
平成28年は、計画の要点等として7問出題されました。
設問 | 内容 | 分野 |
(1) | 周辺環境を踏まえた建築物の配置計画 | 計画 |
(2) | セキュリティ、はきかえに配慮した動線計画 | 計画 |
(3) | プレイルーム上部の構造計画 | 構造 |
(4) | プレイルームの天井落下防止 | 構造 |
(5) | 地盤条件と経済性を踏まえた基礎計画 | 構造 |
(6) | 環境負荷低減手法(太陽熱等) | 環境 |
(7) | 自然採光、自然換気について | 環境 |
(1)周辺環境を踏まえた建築物の配置計画
小学校、公園等の周辺環境を踏まえた建築物の配置計画が問われました。周辺環境を踏まえた計画に関する問題は、平成21年にも同様の出題がありました。この際には、「周辺敷地に解放されたオープンスペース」について問われています。
平成28年では、外部施設として屋外遊戯場の要求されています。屋外遊戯場は「隣接する公園に直接出入りできる」という条件がありますので、敷地南側に位置する公園との行き来を考慮して南側に配置します。
屋外遊戯場の配置計画を踏まえ、「公園との一体的利用に配慮」や「小学校の校庭に圧迫感を与えない建物配置」等の記述ができます。
(2)セキュリティ、はきかえに配慮した動線計画
「セキュリティ」ついてと「はきかえに配慮した動線計画」について考慮したことが問われました。セキュリティに関する問題、平成24年と平成27年に出題されています。
解答欄は「セキュリティ」、「はきかえに配慮した動線計画」それぞれ4行で記入するように用意されていました。
セキュリティ
エントランスホールでの入退場を見渡せる位置に受付を配置し、「入退館を管理しやすい」や「不審者が入館しないように」等の記述ができます。また、受付から階段やエレベーターホールも見通せることで、利用者の安全管理もできます。
屋外遊戯場を見渡せる位置に受付を計画した場合には、「外からの不審者の侵入に配慮」と記述することができます。
はきかえに配慮した動線計画
利用者がどのような動線で施設を利用するかをイメージして、下足箱の設置位置等について記述します。
(3)プレイルーム上部の構造計画
頻出項目である大空間室の構造計画についての問題です。
プレイルーム上部の構造について、「部材寸法」「構造種別、架構形式」「スパン割り」を問われました。
この年から、大梁寸法、小梁寸法、柱寸法、屋根又は床の厚さを記入する解答欄が用意されるようになりました。
部材寸法
プレイルームは辺長比1.5以下の無柱空間で計画するので、大梁はPC梁を採用し、500mm×1200mm程度とします。
小梁は通常通り、300mm×600mmとし、柱はPC梁を支持するので800mm×800mmとするのがよいでしょう。
屋根又は床の厚さは200mmとし、十分な剛性を確保します。
構造種別、架構形式
構造種別はRC造、架構形式はラーメン架構について、定型文で対応します。
スパン割り
プレイルームに採用したスパン割りについて、柱1本あたりの負担荷重が過大にならないようにすること等を記述します。
(4)プレイルームの天井落下防止
プレイルームは面積210㎡以上、天井高6.5m以上の要求ですので、特定天井に該当します。
吊り材の配置等、特定天井について考慮することを記述します。
(5)地盤条件と経済性を踏まえた基礎計画
基礎計画について問われました。地盤条件として、N値と地下水位が示されており、加えて経済性についても記述が求められました。
地盤条件はGL-1.2m以深のN値が40なので、直接基礎で計画できます。ベタ基礎で計画し、「不同沈下に対して安定性のたかい」等の記述をします。
地下水位がGL-2.0mなので、根入れ深さをこれより浅くして、浮力に配慮したことを記述します。
経済性については、「適切な基礎梁寸法で計画した」や「設備ピットとして有効活用した」と記述すればよいでしょう。
(6)環境負荷低減手法(太陽熱等)
環境負荷低減について、「太陽熱」「地中熱」「井水」を用いた設備的手法が問われました。解答としては、3つのうちから2つを選択して、利用方法と省エネ効果を記述するようになっていました。
太陽熱
屋上に太陽熱集熱パネルを設置して、集めた熱を床暖房、給湯等に利用することができます。
地中熱
近年、年間を通して一定温度である地中熱を、冷暖房等の熱源に利用するシステムが普及してきています。
井水
井水を利用することにより、上水道使用量を削減することができるほか、井水の恒温性を空調等の熱源に利用することもできます。
(7)自然採光、自然換気について
頻出項目である自然採光と自然換気についての問題です。それぞれについて3行で記述する解答欄と、用紙の4分の1程度の大きさの補足図記入欄が用意されました。
自然採光
計画によりますが、南側開口部やトップライトから採光を確保することを記述します。
吹抜けの要求はありませんが、任意に設けた場合は吹抜け周囲に採光を確保することも記述できます。
自然換気
「間口広く開口部を計画」「トップライトを開閉式とする」等、換気経路を確保し冷房負荷低減に配慮したことを記述します。
まとめ
以上、平成28年の計画の要点等についてまとめました。
構造分野の「部材寸法、構造種別、架構形式」の問題は、この年のスタイルが続いていますので参考になります。
「基礎計画」についても、この年以降、連続して出題されましたので、よく確認しておくとよいでしょう。
また、「自然採光、自然換気」及び補足図も頻出ですので、対策しておきましょう。
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