【一級建築士製図試験】計画の要点等 過去問分析(平成27年)

平成27年に実施された一級建築士試験「設計製図の試験」は、市街地に建つデイサービス付き高齢者向け集合住宅が設計課題とされました。
概要
中核都市の市街地における、にぎやかな商店街と公園等の一角に「高齢者向け集合住宅」の計画です。高齢者向け集合住宅に加えて、デイサービス施設、レストラン等を備え、居住者と地域住民の交流も図ります。
サービス付き高齢者向け住宅は、バリアフリー対応の賃貸住宅で「サ高住」と呼ばれています。老人ホームとは異なり、自由度が高い中で生活相談や安否確認が付随し、安心できる施設として需要が高くなってきています。
設計条件
- 建蔽率限度90%、容積率限度400%、敷地面積1,750㎡
- 地上5階建ての一棟、基礎免震構造を採用する
- 床面積2,600㎡以上、3,100㎡以下
- 北側接道(18m)、東側接道(8m 歩行者専用道路)
- 西側公園隣接、東側集合住宅、北側商業施設
要求室等
- 住宅部門(住宅、談話ラウンジ、洗濯室)
- デイサービス部門(機能訓練室、浴室、相談室、医務室、スタッフルーム、洗濯室)
- 共用部門(EH、レストラン、ギャラリー、施設管理室)
- 設備スペース
- 屋上庭園、車寄せ
留意事項
- 敷地の周辺環境に配慮
- バリアフリー、セキュリティーに配慮
- 各部門の適切なゾーニング、明快な動線計画、避難に配慮
- 自然採光、自然通風を取り入れ、日射遮蔽にも配慮
- 構造計画では、構造耐力、安全性、経済性に配慮
- 構造耐力上、安全であるように計画し、経済性にも配慮
- 基礎免震構造を採用した構造種別、架構形式
- 部材の断面寸法を適切に計画
- 空調、給排水、電気、消火設備を適切に設け、環境負荷低減に配慮
- EVを住宅部門に1基、デイサービス部門に寝台用1基
計画の要点等
平成27年は、計画の要点として10問出題されました。
設問 | 内容 | 分野 |
1 | アプローチ、駐車場、車寄せ計画 | 計画 |
2 | 住宅部門セキュリティー管理と3階平面計画 | 計画 |
3 | デイサービス部門の動線計画、諸室配置 | 計画 |
4 | エントランスホールの配置と吹抜け計画 | 計画 |
5 | 目標耐震性能 | 構造 |
6 | 上部構造の構造種別、架構形式、スパン割 | 構造 |
7 | 免震層 | 構造 |
8 | レストラン厨房の排気計画 | 設備 |
9 | 住宅部門の排水計画 | 設備 |
10 | 自然災害発生時対策としての給排水、電気設備等 | 設備 |
居住者・利用者・スタッフ等のアプローチ及び駐車場、車寄せ等配置計画
居住者、利用者には各出入り口を用意し、管理者との動線とは明確に分離します。デイサービス施設であるため、駐車場位置や車寄せは利用者最優先で計画します。
住宅部門のセキュリティー管理と3階平面計画
住宅部門は居住者用専用口をオートロックとします。入り口は、管理室からの視認性を確保します。
各住戸は採光や通風、眺望に配慮して計画します。また、3階に計画する屋上庭園との位置関係にも配慮します。
デイサービス部門の動線計画、諸室配置
動線計画は、利用者と管理者の交錯がないように工夫した点を記述します。諸室の配置については、利用者が分かりやすいよう視認性に配慮したことや、浴室、機能訓練室については、採光、景観を考慮します。
エントランスホールの位置と吹抜け計画
エントランスホールは、各部門をつなぐ役割を持つため、どの部門へもスムーズに移動でき、また、わかりやすさも必要となります。
吹抜けを設けたことで、採光、通風が得られるようにしたり、階をまたいだ空間が一体的に活用できるようにします。
構造上の特徴及び構造計画 、目標耐震性能
構造計画については、毎年のように出題される問題ですので解答を事前に準備しておきましょう。事前に特別な条件が示されない限りは、鉄筋コンクリート造、ラーメン架構として問題ありません。
スパン割は図面との整合に気を付けます。構造計画の詳細はこちらの記事を参照してください。
目標耐震性能は建物の用途に合わせて設定しますが、これは事前に準備が可能です。集合住宅の場合は、「 大地震動後、構造体の大きな補修をすることなく建築物を使用できることを目標とし、人命の安全確保に加えて十分な機能確保が図られるものとする。」が適当です。
目標耐震性能についての詳しい記事はこちらを参照してください。
免震層
免震材料の種類は、薄く柔らかいゴム板と硬い鋼板を交互に重ね合わせた積層ゴムを使用します。この材料は、RC造などの重い建物に適しています。免震装置は、柱の下にバランスよく配置します。
外周部のクリアランスは、地震時の可動量を考慮して600㎜程度とします。跳ね上がり式、またはスライド式のエキスパンションジョイントを採用します。
また、外周部と駐車場、駐輪場、構造物などは干渉しないように離しておくようにします。
レストラン厨房の排気計画
排気ファンは、ダクトのルートが短くなるように外壁に近い天井部分に設置します。ダクトルートは、極力、短くなるように計画することで圧力損失を少なくすることができます。
住宅部門の排水管計画
住戸の排水管は、スラブを200㎜下げることで配管スペースを確保します。パイプシャフトは、水廻り近くにまとめて計画することで維持管理性に配慮します。
災害発生時の給排水、電気設備等の継続使用
受水槽に緊急遮断弁を設け、非常用水の確保をします。低層階へは直結給水とすることで、停電発生時の断水を避けることができます。
停電対策として、自家発電設備を用意し非常用電源を確保します。太陽光発電した電力を蓄電池に貯めることでも補助電源として利用します。
まとめ
平成27年は、「サ高住」でした。基準階方式の建物なので、基準階に特徴的な住居に関する設問を確認しておきましょう。
特徴的な出題として「目標耐震性能」と「免震装置」があります。この問題は、出題頻度としては低いですが、知らないと答えることが難しいので、一度はじっくり確認しておきましょう。
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