【一級建築士製図試験】計画の要点等 過去問分析(平成26年)

平成26年に実施された一級建築士試験「設計製図の試験」は、温浴施設のある「道の駅」が設計課題とされました。
概要
地方都市の郊外において、渓流沿いに立地する「道の駅」の計画です。観光客だけでなく、地域住民の交流の場ともなるように温浴施設やレストラン、売店なども併設し、休憩、情報発信、地域振興、地域交流のための施設です。
設計条件
- 建蔽率限度70%、容積率限度200%、敷地面積1,800㎡
- 地上2階建ての一棟、主要な屋根は勾配屋根
- 床面積1,800㎡以上、2,200㎡以下
- 北側接道(18m)、南側接道(6m)
- 西側公園隣接、南側渓流
要求室等
- 休憩・情報部門(休憩・情報スペース、WC男、女、多機能)
- 店舗・飲料部門(地域特産品売場、仕分け室、レストラン)
- 温浴部門(ロビー、浴室、休憩室、リネン室)
- 共用・管理部門(EH、多目的室、事務室、設備スペース、従業員控室、防災備蓄倉庫)
- 屋外テラス
留意事項
- 敷地の周辺環境に配慮
- バリアフリー、セキュリティーに配慮
- 各部門の適切なゾーニング、明快な動線計画、避難に配慮
- 24時間利用可能エリアとそれ以外を明確にゾーニングし、夜間利用に配慮
- 勾配屋根の形状を活かした室内空間
- 自然採光、自然通風を取り入れ、日射遮蔽にも配慮
- 構造計画では、構造耐力、安全性、経済性に配慮
- 構造種別、架構形式、スパン割を適切に計画
- 耐震性に配慮
- 部材の断面寸法を適切に計画
- 空調、給排水、電気、消火設備を適切に設け、環境負荷低減に配慮
- 浴室の給湯設備は、熱源機器と貯湯槽からなる中央給湯方式
- EVを適切に計画
計画の要点等
平成26年は、計画の要点として8問出題されました。
設問 | 内容 | 分野 |
1 | ゾーニング計画 | 計画 |
2 | 諸室の配置と動線計画 | 計画 |
3 | 勾配屋根を活かした室内空間計画 | 計画 |
4 | 構造上の特徴及び構造計画 | 構造 |
5 | 勾配屋根の架構計画 | 構造 |
6 | 浴室の給湯設備の熱源方式、設置場所 | 設備 |
7 | 各機器の設置場所と維持管理計画 | 設備 |
8 | 建築計画上の環境負荷低減手法 | 環境 |
ゾーニング計画
ゾーニングとは、性質の似通ったものを分けることです。今回の設計する建築物は、「道の駅」であることから、24時間利用できる(休憩・情報部門)とそれ以外の部門(店舗・飲料部門、温浴部門、共用・管理部門)とを、まず、明確に分離しなければなりません。
また、施設利用者と管理者の観点からも、ゾーニングしなければなりませんので、その点にも配慮して記述します。
休憩・情報スペース、レストラン、浴室の計画について、位置理由と動線計画
休憩・情報部門は24時間利用できるエリアであり、利用者が駐車場からアクセスしやすいように配慮する必要があります。また、前問のゾーニングと同じことを答えてしまわないように気を付けます。
レストランの位置については、眺望に配慮する条件がありますので、「渓流が望める南側」または「親水公園の景観が望める東側」を意識して配置します。また、採光についても考慮しましょう。
浴室の計画は、他の部門の配置から、2階に温浴部門をまとめて計画することが妥当です。メインエントランスを入って分かりやすい位置にあるEVや階段で2階に上がり、動線に配慮します。位置は、景観や採光、通風に配慮して決定した場所とします。
勾配屋根を活かした室内空間計画
勾配屋根とした場合には、天井の高さが変化することが最も特徴的なことです。このため、この高さの変化を活かした自由な空間としたことを解答します。
勾配屋根に関する詳細については、こちらをご覧ください。
構造上の特徴及び構造計画 、目標耐震性能
構造計画については、毎年のように出題される問題ですので解答を事前に準備しておきましょう。事前に特別な条件が示されない限りは、鉄筋コンクリート造、ラーメン架構として問題ありません。
スパン割は図面との整合に気を付けます。構造計画の詳細はこちらの記事を参照してください。
目標耐震性能は建物の用途に合わせて設定しますが、これは事前に準備が可能です。温浴施設の場合は、「 大地震動後、構造体の大きな補修をすることなく建築物を使用できることを目標とし、人命の安全確保に加えて十分な機能確保が図られるものとする。」が適当です。
目標耐震性能についての詳しい記事はこちらを参照してください。
勾配屋根の架構計画
勾配屋根では、切妻とした場合、中央の柱の実長が長くなるため、柱の剛性を高めなければなりません。
勾配屋根の構造計画についての詳しい記事はこちらを参照してください。
浴室の給湯設備の熱源方式、設置場所
熱源として、Ⓐガス又は油の燃焼によるボイラー方式、Ⓑ電動空冷ヒートポンプ方式を選びます。各方式の特徴を覚えておいて、採用理由と設置場所について答えます。
省エネルギーに関連して解答することが得策なので、燃焼効率、エネルギー効率をメインに答えます。設置場所については、配管効率、維持管理性などに配慮します。
給湯に関する詳しい記事は、こちらをご覧ください。
「浴槽ろ過機」、「非常用発電機」、「地域特産売り場の空調機」の設置場所、維持管理、更新
各機器の設置場所、維持管理、更新について解答する際には、まず、省エネルギー性に配慮することを念頭に置きます。このため、エネルギー供給点から負荷までの距離は、極力、短くするようにします。
電気的な設備の場合には、距離的な延長は関係ありませんので、機器自体が省エネルギー性に優れたものを採用するようにします。
維持管理に関しては、点検スペースを確保するようにします。更新に関しては、機器の運び込みに考慮した位置に設置することを考慮します。
勾配屋根、吹抜け等に対応した環境負荷低減
環境負荷低減を考慮する中で、建築計画上の手法としては「日射遮蔽」が有効です。今回は勾配屋根が条件ですので、軒の出幅を大きくすることで日射遮蔽します。
また、吹抜けを利用し、トップライトや窓を通じた自然通風を効果的に利用することで、空調負荷低減を図ることができます。これは、中間期に自然通風をすることによる空調稼働時間削減が省エネ手法のひとつとなります。
自然通風に関しては、こちらの記事もご覧ください。
さらに、吹抜けを通じて大開口から採光することで照明負荷低減に役立ちます。
まとめ
平成26年は、勾配屋根を採用した温浴施設のある道の駅でした。
まず、基準階方式でない場合は「勾配屋根」の可能性がありますので、勾配屋根に関する過去の出題は覚えておきましょう。
特徴的な出題として「目標耐震性能」があります。この問題は、出題頻度としては低いですが、知らないと答えることが難しいので、一度はじっくり確認しておきましょう。
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