【一級建築士製図試験】計画の要点等 過去問分析(平成24年)

計画の要点等がA3解答用紙で問われるようになって10年が経過しました。近年の試験では、8割程度は過去と類似した問題が出題されます。
よって、過去問対策が重要ですので、これまでにどんな問題が出たのか見ていきます。
本日は平成24年「地域図書館」です。
概要
公園の一角に、図書館機能に加えて講演会やセミナー等を開催できる地域図書館を計画するものです。
建物規模は地下1階、地上2階建てです。
敷地条件
- 北側:公園
- 南側:歩道付き道路 一戸建て住宅
- 西側:公園
- 東側:歩道付き道路 集合住宅
主な要求室等
図書館部門
- 一般開架スペース
- 新聞・雑誌コーナー
- サービスセンター
- 閉架書庫(地下1階指定)
- 読書室
集会部門
- 小ホール(段床形式)
- 展示ギャラリー
- 会議室
共用・管理部門
- エントランスホール
- カフェ
- 事務室
- 作業室(書籍の整理等)
- 設備スペース(地下1階でもよい)
その他
- メインエントランスを道路側に計画
- サブエントランスを公園側に計画
- 150㎡以上のまとまった吹抜け
外部施設
- 車いす使用者用駐車場 2台
- サービス用駐車場 1台
- 駐輪場 20台
特徴的な留意事項
- 小ホールの空調方式は単一ダクト指定
- 自然採光を積極的に取り入れ、日射遮蔽にも配慮(この年以降、毎年)
出題内容
平成24年は、計画の要点等として8問出題されました。
設問 | 内容 | 分野 |
(1) | 一般開架スペース等の配置と動線 | 計画 |
(2) | バリアフリーについての工夫 | 計画 |
(3) | セキュリティについての工夫 | 計画 |
(4) | 建築物の構造、架構、スパン割り | 構造 |
(5) | 小ホールの構造計画 | 構造 |
(6) | 吹抜け部分の冬期の空調計画 | 設備 |
(7) | 一般開架スペースの自然採光、日射遮蔽 | 設備 |
(8) | 小ホールの空調機械室配置、ダクトルート | 設備 |
(1)一般開架スペース等の配置と動線
一般開架スペース、サービスカウンター、小ホール、カフェの配置と動線計画を記述するものです。解答欄はそれぞれ3行で記入するように分かれていました。
一般開架スペース
配置により解答が変わりますが、例えば公園側に配置した場合、景観に配慮したことを記述します。また、気軽に利用できるのが望ましいので、エントランスホールに面することを記述します。
サービスカウンター
設計条件に「書籍等の貸出、返却を行う」とあるので、利便性のいい位置に計画すると思います。利用者にわかりやすい配置とすることを記述します。
小ホール
多人数が利用することから、共用部からの動線に配慮することを記述します。例えば、2階に配置する場合は、EVホールから視認しやすいこと等を記述します。
カフェ
設計条件に「貸出前の書籍を閲覧できる」とあるので、図書館部門に近接して計画し、利便性に配慮することを記述します。
また、公園側に配置できる場合は、景観への配慮についても記述します。
(2)バリアフリーについての工夫
利用者の移動に配慮して、床に段差のない計画とすることを記述します。また、利用者用の廊下幅は2.5mを確保すると思いますので、十分な幅員とし車いすの通行に配慮することを記述します。
小ホールは段床形式であるため、自分のプランと食い違いがないようにスロープ等の段差処理について記述できるとよいでしょう。
(3)セキュリティについての工夫
事務室に受付カウンターを設け、建物内が見通せる場合は、建物への出入りやEVの乗降を監視することを記述します。
図書館部門のサービスカウンターについても、まわりが見渡せる配置になっているなら、書籍等の管理がしやすいことを記述できます。
(4)建築物の構造、架構、スパン割り
近年も、毎年必ず出題される項目です。自分のプランに合致していることを十分確認し、暗記した定形文で対応します。
(5)小ホールの構造計画
小ホールは設計条件に「講演会、映画上映会等に利用」とあるので、無柱空間で計画すると思います。
柱を抜く部分の梁がロングスパンになるので、PC梁を採用したわみやひび割れを抑制すること等を記述します。
(6)吹抜け部分の冬期の空調計画
吹抜け部分の空調計画について、注意する点と対応策を記述するものです。解答欄は注意することを3行で、対応策を4行で記入するようになっていました。
注意すること
吹抜け部分は天井が高くなるので、温度勾配が大きくなり底冷えする。また、吹抜けを外壁面に配置し、全面を窓とした場合、コールドドラフトが発生しやすい等が想定されます。
対応策
能力の高い吹出し方式を選定し、吹抜け中央部まで気流が届くように配慮することを記述します。
また、コールドドラフトに対しては、ペリメーターゾーンを適切に空調することを記述します。
(7)一般開架スペースの自然採光、日射遮蔽
自然採光については、開口部やトップライトから自然光を取り入れることについて記述します。
日射遮蔽については、東西面に開口部があれば鉛直ルーバー、南面に開口部があれば水平ルーバーや庇で対応することを記述します。また、Low-Eガラスの採用について記述してもいいでしょう。
(8)小ホールの空調機械室配置、ダクトルート
小ホールの空調機械室の位置と給気、換気ダクトのルートについて工夫したことを記述するものです。
設計条件に「小ホールの空調は単一ダクト」と指定されていますので、空調機械室にAHUを設置して給気、還気を行います。
設備スペースは地下1階に配置可能ですので、空調機械室は地下1階とすることができます。地下に配置することの利点として、1階のスペースが有効利用でき、騒音にも配慮できます。
ダクトルートについては、空調機械室のに近接して配置したり、各階同じ位置に配置することができれば、「屈曲を少なくし、圧力損失を減らす」のような記述ができます。
また、段床形式ですので、段床下を還気チャンバーとして利用し、良好な気流分布とすることも記述できます。
その他、小ホールに近接して専用の空調機械室を計画することも考えられます。この場合、ダクトルートが短くて済むので、損失が少ないことについて記述します。
まとめ
以上、平成24年の計画の要点等についてまとめました。
この年から、近年の頻出項目である「自然採光と日射遮蔽」が出題され始めました。当時はLow-Eガラスの採用等を記述してもよく、近年に比べ難易度は低いです。
※近年の試験では、日射遮蔽の問題でLow-Eガラスの採用は除かれることが多い。
設備分野では空調の全般的知識が問われているので、しっかり記述できるように学習することで、空調設備についての理解を深めましょう。
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