【一級建築士製図試験】計画の要点等 過去問分析(平成22年)

計画の要点等がA3解答用紙で問われるようになって10年が経過しました。近年の試験では、8割程度は過去と類似した問題が出題されます。
よって、過去問対策が重要ですので、これまでにどんな問題が出たのか見ていきます。
本日は平成22年「美術館」です。
概要
公園の一角に建つ、地上2階建ての市立美術館が設計課題です。地元出身の画家の作品を常設展示するほか、企画展示、地域住民の作品展示、ワークショップ等を行う施設を計画します。
敷地条件
- 北側:歩道付き道路 集合住宅
- 南側:遊歩道 河川敷
- 西側:公園
- 東側:道路 公園駐車場
主な要求室等
- 常設展示室
- 市民ギャラリー
- 収蔵庫
- 搬入・荷解き室
- エントランスホール(吹抜けあり)
- アトリエ
- 研修室
- レストラン
- 事務室
- 設備スペース
外部施設
- 屋外創作広場
- 車いす用駐車場 2台 サービス用 1台
特徴的な留意事項
- 敷地周辺環境に配慮
- 来館者動線と搬入動線が交差しない
- 美術品に配慮した設備計画
出題内容
平成22年は、計画の要点等として9問出題されました。
設問 | 内容 | 分野 |
(1) | 建築物のアプローチ計画 | 計画 |
(2) | 常設展示室と市民ギャラリーの配置と動線 | 計画 |
(3) | 収蔵庫の配置と動線 | 計画 |
(4) | 屋外創作広場の配置と動線 | 計画 |
(5) | 建築物の構造、架構、スパン割り | 構造 |
(6) | 市民ギャラリーを無柱空間とするための工夫 | 構造 |
(7) | 常設展示室、EH、研修室の空調方式 | 設備 |
(8) | 収蔵庫の環境条件を満たすための手法 | 設備 |
(9) | 常設展示室の照明計画 | 設備 |
※EH:エントランスホール
(1)建築物のアプローチ計画
幅員の広い北側道路からアプローチすることを記述します。また、車いす用駐車場の動線に対する配慮等を記述します。
サービス用と利用者用でアプローチを分けることで、動線が交錯しないようにすることについても記述します。
設計条件に「アプローチは公園または遊歩道からでもよい」とあるので、サブアプローチについて記述するとよいでしょう。
(2)常設展示室と市民ギャラリーの配置と動線
常設展示室への搬入動線を管理部門内に確保し、利用者動線と交錯しないようにできるのが理想です。うまく計画できていれば記述します。
また、展示部門と共用部門を分離して、利用者にわかりやすい動線とすることを記述します。なお、展示室や市民ギャラリーへはホワイエを介して入室するとよいでしょう。
(3)収蔵庫の配置と動線
収蔵庫の位置により内容が変わりますが、搬入動線ができるだけ短くなるようにする工夫について記述します。
また、搬入動線と利用者動線の交錯がないようにすること記述します。
(4)屋外創作広場の配置と動線
屋外創作広場は設計条件に「アトリエ、遊歩道、公園との動線に配慮」とあるので、このことを記述します。
計画によりますが、アトリエから直接出入りできるようにするのが望ましいです。
(5)建築物の構造、架構、スパン割り
近年も、毎年必ず出題される項目です。自分のプランに合致していることを十分確認し、暗記した定形文で対応します。
(6)市民ギャラリーを無柱空間とするための工夫
構造分野で頻出の無柱の大空間についての問題です。PC梁を用いて、ロングスパンの梁のひび割れやたわみを抑制すること等を記述します。
(7)常設展示室、EH、研修室の空調方式
採用した空調方式と採用理由を答える問題です。解答欄に空調方式の選択肢が用意されており、記号で記入するようになっていました。選択肢は以下のとおりです。
- 空冷ヒートポンプパッケージマルチ型エアコン
- 空冷ヒートポンプパッケージ床置き型
- 定風量単一ダクト
- 変風量単一ダクト
- 外調機+ファンコイルユニット
常設展示室やエントランスホールは、十分な吹出し量が確保できる、単一ダクトや空冷ヒートポンプパッケージ床置き型を採用します。
研修室については、個別制御が可能な空冷ヒートポンプパッケージマルチ型エアコンか、外調機+ファンコイルユニットが妥当でしょう。
(8)収蔵庫の環境条件を満たすための手法
美術品の収蔵に適した環境とするための、建築手法(構造、内装等)と設備的手法(空調方式)が問われました。解答はそれぞれに分けて記入するようになっていました。
建築手法については、壁や天井を二重構造とすることや、内装は木仕上げとすることを記述します。
設備的手法(空調方式)は、安定した空調が可能な方式とするほか、他の室と系統を分けること等を記述します。
また、二重構造の隙間を空調する、間接空調方式とします。
(9)常設展示室の照明計画
平成21年に続き、照明計画が出題されました。
油絵の展示に適した照度が分かれば、具体的な数値を用いて記述します。数値以外でも、ライティングレール等の照明器具について記述すればよいでしょう。
まとめ
以上、平成22年の計画の要点等についてまとめました。
平成22年は設計課題が美術館ということで、展示室や収蔵庫等、美術館特有の要求室についての問題が多いです。
また、出題分野や計画と設備が多く、構造は基本的な問題しか出ていません。美術品というテーマ上、どちらかというと室配置や設備計画について問うため、このような配分であると考えられます。
次年以降、設計課題により分野ごとの出題数がどう変化するかもチェックしてみると面白そうです。
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